当院概要
当院概要
研修医を受け入れ始めて4年が経ちます。わずかな月日ですが、年ごとに研修医の特徴があるようです。それを若者の気質の変化と言うのかもしれません。同様に医学知識も更新を繰り返し、学習の様相も媒体の変化とともに変わって来ています。いったいどのような研修を行えば良いのか。いつもわれわれが悩むところです。いかなる診療科に進もうとも最低限身につけなければならない知識と手技はなんだろう。このことを常に頭に置いて、研修医一人一人にあった、テーラーメイドの研修を行うことを心がけています。
2011年4月現在、麻酔科の医師は常勤7人(5名が麻酔科学会指導医、1名が日本集中治療医学会専門医、1名が標榜医取得を目指して研修中)です。
麻酔科常勤医のうち2名はペインクリニック専門です。
*麻酔科研修医向け教育ガイドラインはPDFファイルを参照してください。
過去を知らぬものは同じ過ちを繰り返すだけでなく、未来を予想することもできません。
様々な麻酔法や器機の生い立ち、消えて行った薬剤や考え方を学びます。
この知識を通して、安全性の追求とはどういうことなのかを知ってもらいたいと思います。
静脈麻酔薬による全身麻酔の経験を積むことで麻酔科以外でもベッドサイドで使用する鎮静薬や鎮痛薬、局所麻酔薬の薬理を学ぶことができます。
いわゆる薬物動態学や薬力学を学ぶわけですが、簡単に言うと、薬物を投与した時にその薬物が人の体にどう働くか、人はその薬物をどう処理するかということなのです。
さらに、昇圧薬、降圧薬が主ですが、循環器作用薬、その他、使用頻度の高い抗不整脈薬についても学びます。
敵を知り己を知れば百戦危うからず。的確な術前評価を学んでもらいます。
術前合併症のみならず術前に予想し得る周術期の合併症、気をつけなければならない常用薬などです。
評価だけでは先にすすみませんので、同時に対策を考えてゆきます。
術前評価と密接に関連します。
手術中、われわれに代わって患者を観察し、情報を提供してくれるモニタリングについて学びます。
それぞれのモニターの持つ情報量やその特性、限界を学びます。
また、モニターそのものが信頼できなくなる状況を知ってもらいます。
これは、情報の発生源を常に確認するという癖をつけるためです。
将来麻酔科に進もうと考えている人も、そうでない人も、全身麻酔と区域麻酔の利点欠点を知ってもらいます。
また、麻酔そのものの基本的な考え方を学びます。
麻酔の方法よりも、常に監視をする、いわゆるビジランス(24時間警備することですが)とはどう言うものかを理解して欲しいと思います。
麻酔管理は脳神経外科、外科、整形外科、耳鼻咽喉科と対象に制限がありますが、麻酔法では全身麻酔単独、区域麻酔と全身麻酔、区域麻酔単独と研修では十分な範囲をカバーします。
2007年からの麻酔管理症例数と麻酔法を下に掲げます。
3ヶ月の研修で80から100例の麻酔を経験できます。
入院の間中モニタリングをすれば安全ですが、人的資源にも機械にも限りがあります。
監視を続ける必要性の判断は、監視がいらなくなるとはどう言う事なのかを学びます。
この延長上に集中治療管理があると考えて下さい。
集中治療というと心臓の手術や派手なモニタリングを想像しますが、残念ながら当院には心臓血管外科はありません。
しかし、だからといって暇なわけではないのです。
さまざまな合併症や基礎疾患を抱えた周術期患者の管理や、敗血症など急性期患者の管理を行っています。
入室適応患者の範囲が多岐にわたるため、場合によっては、心臓血管外科中心の集中治療室よりも初心者には取り付きやすいかもしれません。
集中治療は呼吸循環の管理だけでなく、輸液から栄養や感染の治療も行います。
単なる呼吸循環のモニタリングではなく、さまざまな方法を使って情報を得ながら、患者が一般病棟へ退室するまで文字通りの全身管理を行います。
4年間の集中治療室の実績を表にしています。
対象患者や、処置を見て研修選択の参考にしてください。
酸素投与に始まる呼吸管理から血液浄化法まで、見学だけではなく、実際に指導医とともに実施してもらいます。
指導医は集中治療学会認定医です。
ペインクリニックは原則としてある程度上記の知識や技術を身に付けた後に学びます。
痛みを訴える患者の診察法から、その痛みの分類法を学びます。
神経学的な知識だけでは疼痛を訴える患者の診察、検査、診断はできません。疼痛学特有の用語や分類があります。治療についても麻酔法に加え、様々な鎮痛法、神経ブロックの方法や薬剤を学びます。
日本では、痛みは症候学の一部として取り扱われてきました。学問上の取り扱いは軽かったのですが、患者にとっても医師にとっても日常活における痛みの比重は重いものです。近年、基礎研究の発展に伴って、痛みと言う症状が実は多彩な面を持つことが分かってきました。
慢性痛や神経因性疼痛といわれる、治療にきわめて難渋し、患者の日常生活を束縛する痛みを知ることは、リハビリや整形外科領域へ進もうと考えているみなさんにも役に立つでしょう。
以上でおおまかな説明を終わります。各項目は、大学での講義のような形でなく、日々の診療や麻酔を通じておこないます。人それぞれ個人差もあると思いますので、それも考慮して行きます。もちろんみなさんにも勉強してもらう必要があります。しばしば、自分のやり方、と言う先生もいますが、研修の間は、標準的な方法をしっかりと学んで下さい。
日本麻酔科学会認定病院、日本ペインクリニック学会指定研修施設、日本集中治療医学会認定施設
当院の麻酔科、集中治療をローテート先に選んだ先生たちへの参考書、推薦図書です。麻酔科関連は中村禎志、集中治療分野は濱川俊朗が推薦者になっています。読む本の好みは個人の嗜好によります。他人が呼んで面白いと感じても、自分にとってはつまらないということがほとんどでしょう。男女の好みと通じるところがあるかもしれません。ここにあげた本は、何を読んでいいかわからないという人を対象にしています。簡単な書評をつけておきましたので、参考になれば幸いです。
この2冊は、電解質の単位からわからないという人向けです。まずは、基本的なことを理解していきましょう。
イオンチャネルと聞いただけでめまいがしてくる方におすすめ。立ち読みするチャンスがあればまず第 20章を読んでください。
手術を受ける患者を目の前にした時、まずは、リスクの評価をしなければなりません。詳しい評価はともかく、リスクがあるということはどういうことなのか、何をリスクと考えるか、を知るには良い本であると思います。また、外科系に進む人間には、麻酔科へのコンサルテーションの仕方の参考になります。手術は可能でしょうか、リスク判定をお願いします、などという幼稚なコンサルテーションをしないためにも一読の価値はあると思います。なお、術前リスク評価は1から2年に一度各学会(特に循環器関連)から改定されて行きますので、ホームページなどでチェックしてください。
モニタリングの意味と意義、簡単な原理、手技、利点と欠点が見やすくまとめてあります。
どの教科書でも大差はありません。学生時代から使っているもので間に合います。それでも将来のために欲しいという人は以下のものを推薦します。必ずしも英語がよいとは限りませんが、将来麻酔科に進むならば、業界用語に慣れておくのも良いかもしれません。外国語の本を読むことは、語学の勉強というよりも、その言語を使用する人間の思考法や論理の展開の仕方を知ることになります。
手技に関しては、特に推薦はありませんが、どの本も一長一短です。なるべく写真が多く、わかりやすいものを買うと良いでしょう。
臨床の現場において重要な知識は基礎で習った知識です。生理学、生化学、解剖学、病理学などの基礎の教科書が大事です。正常な状態を知らなければ、病気という異常な状態を理解できる訳がありません。「山は裾野が広いほどほど高くなる」という例えの通りに、基礎の知識が広いほど到達点は高いものとなるでしょう。
経験や知識、技術を教えてくれる本は多いです。しかしながら考え方や考える技術を教えてくれる本は多くはありません。われわれは臨床の現場において、知識以上に考え方を重視しています。浅学ですが一先輩として、みなさんの研修と勉強に役に立つと思われる書籍を紹介・推薦します。大事なことを一つ、基本的に最新最良の知識は英語で入ってくるので、翻訳本ではなく原著を読んだ方がいいですよ。
以下の本は「進化医学」の本です。個人的に大学のカリキュラムに入れた方が良いのではないかと考えています。進化と病気のかかわり合いを探ることによって、病態を理解するという考えです。欧米ではポピュラーになりつつあります。
岩田先生の本は面白いです。哲学を感じます。 以上の3冊は時間の余裕があるときにどうぞ。
診療科 | 2008年 | 2009年 | 2010年 | 総計 |
---|---|---|---|---|
ペインクリニック | 94 | 95 | 79 | 268 |
リハビリ | 1 | 1 | ||
外科 | 301 | 423 | 398 | 1122 |
耳鼻咽喉科 | 38 | 15 | 53 | |
消化器科 | 20 | 10 | 12 | 42 |
整形外科 | 406 | 565 | 625 | 1596 |
内科 | 1 | 1 | ||
脳神経外科 | 306 | 288 | 250 | 844 |
泌尿器科 | 8 | 8 | ||
放射線科 | 3 | 11 | 8 | 22 |
総計 | 1169 | 1407 | 1381 | 3957 |