関節を人工物で置き換える手術のことを人工関節置換術といいます。人工関節置換術は障害を受けた関節の機能を回復することを目的とします。現在、体のあらゆる部分の関節置換に人工関節は用いられていますか、この中でもっとも成績の優れている部位は膝関節や股関節で、肘関節や肩関節がこれに次ぎます。膝関節や股関節の10年成績は95%を越えるとも言われており、良好な手術成績であり広く一般に受け入れられています。
人工関節の手術適応は、薬物療法や装具療法、リハビリテーション等保存的治療を行っても症状が軽快しない状態です。そのタイミングは一人での外出が出来なくなってきた時に行います。 いよいよ歩けなくなってからでは、筋力の低下や関節の拘縮を来たし手術後のリハビリテーションが大変になります。対象年齢は60歳から80歳位までの方とされていますが、関節の状態や関節リウマチ患者では若年者でも適応となります。
最近の人工関節の進歩は目を見張るものがあります。金属やプラステックなど材料の改良のみならず、特に膝関節では日本人の生活様式にあうようによく曲がる膝の開発が進んできました。従来の人工膝関節では曲がりはおおよそ120度が限界でしたが、最新機種は155度(正座に近く)曲がる人工関節が開発され、私たちもこの機種を採用し、手術を行っています。残念ながら耐久性の問題より実際に正座はできませんが、深屈曲が可能となったことで低いいすからの立ち上がりなど多くの日常生活の場面で楽に行動が可能となりました。股関節も従来の人工関節は深屈曲すると脱臼の危惧がありましたが、最近では関節可動域も大きくなり、日本人の生活にマッチした人工関節を当院では採用しています。後療法は骨折などに比べると非常に簡単で早く自宅に帰れるようになりました。膝関節の手術の場合、手術の翌日より関節可動域訓練、2日目より起立練習が始まります。術後3日目には歩行が可能となります。術後3週間程度で自宅に帰ることが可能です。股関節の手術の場合、2日目で車いすを使用(トイレに行けます)、3日目より起立訓練・歩行訓練が開始となります。入院期間は3〜4週間程度です。これは後述するMIS手術手技・手術機材などの進歩と人工関節材料の進歩によるものです。
<MIS手術>
私たちは2005年より、最先端の人工関節の手術手技である最小侵襲手術MIS(Minimally Invasive Surgery)に取り組んでいます。MIS手術の目標は皮膚切開と大腿四頭筋に対する侵襲を最小限に抑えながら、従来通り正確に人工関節を挿入することであり、手術成績が犠牲になってはいけません。すなわち、正確な人工関節の設置が小さな手術視野(手術展開)で求められます。高度な技術が必要です。従来15〜20cmの切開で手術をしていましたが、MIS手術では8〜12cmの皮膚切開で行います。私たちはMIS手術手技の一つであるQS法による人工膝関節手術を行っており平成19年6月で100関節を超えました。小さな皮膚切開、筋肉切開は美容的見地、術後疼痛、機能回復の観点から望ましく、術後の患者負担の軽減、早期機能回復が可能となります。
<人工関節手術と自己血輸血>
膝や股関節の人工関節手術では骨を切る操作を行いますので出血を生じます。その量は600ml〜1000mlで輸血を必要とします。私たちは手術前に自分自身の血液を採っておき、手術の際にその血液を使用する貯血式自己血輸血を行っています。献血した血液(他人の血液)を使用する同種血輸血に比べ、アレルギー反応が無い、血液でうつる病気(ウイルス感染)がないことよりより安全です。手術日が決まったら外来で1週間に400mlの貯血を数回行います。膝関節の手術では800ml(400ml×2回)、股関節の手術では1200ml(400ml×3回)の自己血貯血を行っています。